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※下記はメルマガ「つれづれ亜州観望記」の原稿を再編集したものとなります。こちらはサンプル原稿なので、メルマガ運営元である株式会社フーミーの鈴木創介さんの質問を取り上げました。

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Q.以前、安田さんのブログの読者でした(編集部注.中国のネット掲示板の書き込みを2chまとめサイト風に翻訳したブログ『大陸浪人のススメ』のこと)。面白かったんですが、またやらないんでしょうか? (男性33歳 会社経営者)

A.ありがとうございます。もちろん時間や労力の問題もあるのですが、それ以上に「やりたいけれど、もうやれない」が正しい答えになります。

中国でネット掲示板が熱かったのは、せいぜい2010年ごろまでのことでした(これは日本で『2ちゃんねる』が尖ったプラットフォームでいた時代とほぼ軌を一にします)。

当時はSNSが未発達で、本来は身近な相手と話すような生活の話題や身近な社会問題、政治への不平不満などがネット掲示板上に数多く書き込まれました。そして、お互い顔も知らない「名無し」に近い人たちがそれを議論し合っていたのです。当時、彼らの会話を「聞き耳頭巾」をかぶるがよろしく覗き込んでみせたことが、『大陸浪人のススメ』に限らず、中国ネット掲示板翻訳系のブログの最大の面白さだったと言っていいでしょう。

しかし、その後の日本でネットの流行がツイッターやLINEに移行したのと同様に、中国でも流行はネット掲示板から微博(ツイッターに似たサービス)、さらに微信(LINEに似たサービス)へと変わっていきます。つまり、書き込みの内容が「名無し」相手の公開発言から、フォロワーや一定範囲の知人向けの言葉に変化していきました。

これらは本質的にはクローズドなコミュニケーションなので、いざ翻訳した場合、従来のネット掲示板と比べて翻訳や編集の手間がかかるわりに、話が内輪向けで外部者には面白くない傾向があります(特にネット掲示板特有の、名無し同士による「吹いたレス」の応酬や、掲示板民に独特の連帯感は姿を消しています)。また、微博はネット掲示板と比べてレスの付きが悪く、まとまった分量を訳せないという問題も出てきます。

ほか、特に2012年ごろを境に、中国政府のネット言論統制が従来以上に強化され、「デマ(=当局に不都合な情報)」を流布した者が容赦なく摘発されるようになりました。当然、こちらも中国のネットの書き込みが大幅につまらなくなった原因となっています。

現在の翻訳ブログは、中国のネット掲示板プラットフォームの衰退という流行的要因と、ネット言論それ自体の衰退という政治的要因から、往年ほど面白い内容は絶対に作れません。「運営」するだけならば今でも可能なはずですが、継続的におこなうと魂なきリビングデッドのようなコンテンツになってしまいます。これが、「やりたいけれど、もうやれない」本当の理由です。

(でも、たまにこのブログ上で不定期でやることはあるかもしれません。やっぱり「聞き耳頭巾」は面白いもの)







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【書評】福島香織『赤い帝国 中国が滅びる日』

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赤い帝国・中国が滅びる日
福島香織
ベストセラーズ
2016-10-26


 
<構成>
序章:習近平政権がはらむチャイナリスク
第一章:習近平は暗殺されるのか
第二章:戦争は勃発するのか
第三章:経済は崩壊するのか
第四章:中国のメディアは死んだのか
第五章:中国五つのシナリオ

<簡評>
日本人が中国にしばしば戸惑う隠れた要因のひとつは、日中両国の政治や社会の「速度観の違い」だ。中国はとにかく変化が速い国で、十年一昔どころか半年一昔と言っていいくらい、政治・経済の情勢や社会の様子がくるくる変わる。ことに2012年秋の習近平体制の成立後はなおさらだ。

著者も述べるように、前任者の江沢民・胡錦涛時代にはなんとなく「読めた」中国の動きは、習近平政権下で非常に読みづらくなった。鄧小平の遺志にもとづいた集団指導体制が敷かれ、合議のもとでそれなりに合理的な意思決定がなされてきた従来と比べ、現在の習近平体制は習の個人独裁色が強い。

なので、習近平の頭の中をのぞかない限りは中国の未来は見えない――。

いや、習本人もよくわからないまま進行している事柄や、習に擦り寄ったり反発したりして独自の動きをとる人たちが大勢いることを考えると、誰一人として国の未来がわからない状態になっているのが2016年11月現在の中国だと言うべきだろう。

個人がそんな中国の現在を追いかけることは難しい。そこで必要になるのは、中国語が理解できて、イデオロギー面での偏りが少なく(もしくは本人の思想傾向を事実関係の取捨選択や紹介にあまり反映させず)フットワークが軽い、情報の良質なまとめ人を何人かフォローすることだ。

こうした意味で、著者は現在の日本の一般向け中国書籍の書き手のなかでは有数の信頼できる人である。本書は、題名と装丁はかなりおどろおどろしいものの、中身は安定感のある現状解説の書になっている。

任志強事件、雑誌『炎黄春秋』の事実上廃刊、東シナ海の中国軍機と自衛隊機の異常接近、天津の大爆発事件、株価の乱高下、AIIBと一帯一路構想、革命歌を歌う美少女アイドルユニット結成、人権派弁護士の大量拘束、香港の銅鑼湾書店事件、広東省烏カン村の騒動、多発する日本人のスパイ容疑拘束事件……と、本書が紹介・解説を加える話題は多岐にわたる。

いずれも日本国内で単発のニュースとして読み流す限り、日々消費されて消えていく「中国の話題」だ。ただ、良質な中国書は、こうした個々の事実に一定の連関性を見出して、最大公約数的な説明要素を抽出して読者の前に提示していく。

この定義において、本書は「良質」だ。読みやすい文体も読者にとって助かるだろう。

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本書の特色として、第一章の習近平に関する記述で、一般的に怪しげとされがちな「香港情報」を積極的に紹介する手法を取っている点が挙げられる。

著者のこの手法には賛否もありそうだが、文中でその信頼性に一定の留保をつけ、現地から可能な限り裏取りの談話を聞いたりしたうえでの紹介なので、つとめて良心的な情報の取り扱い方だろう。中国の最高指導者の素顔は公開情報からだけではほとんど見えてこない。一定の「怪しさ」を腹に飲み込んだうえで大胆な仮説を展開することはときに必要となるからだ。

一方、本書に問題点があるとすれば、ひとつは現代中国についての予備知識がまったくない人への目配りがやや弱い点(ただ、このブログやメールマガジンを購読するような人であれば、この点はほとんど問題ない)。もう一点は、やはりこのタイトルと装丁だろう。

本書に限った話ではなく、現代の日本の出版業界で中国を扱う一般書やムックが世に出る場合、出版社が営業的に安定した数字を出す必要から、真っ赤なドロドロした装丁やどぎついタイトルが付けられる場合が多い。商業出版は社会の要求が常に反映されるからだ。

私はこの傾向は困った話だと思うが、一方で社会において中国本が出版されなくなる&売れなくなると(少なくとも私個人としては)知的欲求の充足の面でも生活維持の面でも、もっと困った事態になる。かく言う私自身、「ドロドロ系」装丁の雑誌やムックなどに寄稿する機会は多いが、これは現代の日本において中国にたずさわるライターが、安定的に仕事を継続していくために負わざるを得ない宿業の一種として割り切るしかないと考えている。本書もまた、この種の「宿業」を負っている。

ただ、本書の内容は、このタイトルや装丁に「引く」ような健全な感覚の持ち主たちにこそ、本当は伝わってほしいものだ。中国は世間で煽られるほど不安定な国ではないが、一方で図体が大きいだけにリスクの総量も多大である。

本書は読み手の感情をむやみに煽らない、冷静なチャイナリスク解説本なのだ。


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※上記はメルマガ「つれづれ亜州観望記」のサンプル記事の原稿を再編集したものとなります。

自己紹介と、このブログ

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こんにちは。安田峰俊と申します。

軽く自己紹介をしておきますと、だいたい中華圏の話題が専門のルポライターです。
著書も何冊か出てますが、実は雑誌の仕事で書籍収録されない海外ルポ記事とかも結構書いてます。
あと、多摩大学経営情報学部で非常勤講師もやっています。

むかし、2008年ごろから「迷路人」のHNで中国のネット掲示板を2ch調に翻訳する『大陸浪人のススメ』というブログをやっていて、あれはあれで面白かったわけですが、2012年ごろに閉鎖。

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(↑往年のブログ)


理由は更新が面倒になったとか、コメント欄が荒れるのがえらいうっとうしいとか、ブログの方向性が固まりすぎてネット掲示板翻訳以外の真面目な記事を書きづらかったとか、プラットフォームにしていたg●oブログがガラパゴスすぎてもうやだ限界とかいろいろあったわけですが、実は最大の理由は「中国のネットがあんまりおもしろくなくなったから」です。
(またその事情を書くこともあるでしょう)。

その後、大体のことはツイッターでも書けてしまうし、もうブログなんぞは無理してやらんでええわいと考えて数年過ごしておりました。

しかしながら、2016年11月から半年限定でfoomiiのメルマガがはじまって過去記事の転載をする場が必要になったり、たまには中国のネットの翻訳を不定期でやったりするのも面白いかなあなどと考えたりで、いまになって地味に別のブログをこっそり立ち上げてみることにしました。

ほか、自分の仕事がらみのことですと、実は雑誌記事なんかで原稿を書いた後で書籍に収録していない話題が手元に溜まりまくっていたりもするわけです。

習近平が文革時代に下放された村の突撃ルポとか、山手線の内側くらいの面積が丸ごと「鬼城」になった内モンゴルのゴーストタウン探訪記とか、南京に新しくできた慰安婦記念館参観記の小ネタとか、非常にいろいろ楽しい話があり、今後もそういう話は時間の経過とともに増えていくわけです。

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(↑陝西省梁家河村。偉大なる習主席をたたえるテーマパークと化しています)

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(↑内蒙古自治区オルドス市。うしろのマンション、全部無人)

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(↑南京、大戦中の慰安所を「歴史戦」のため博物館に変えてリニューアル)


あと、取材のついでに西安の兵馬俑とか内モンゴルにある元の上都遺跡とか、武漢の博物館にある越王勾践の剣とかエルサレムの嘆きの壁とか、プノンペンのクメールルージュの収容所(S21)とかあれこれ見る機会があって、やはりちょっと書いておきたい話はたくさんあるわけです。

……というわけで、更新がんばらない時間使わない商売やりすぎないの三原則を基本に、ぬるく進めていければと考えています。


 

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